GPSラップタイマー「KLAP」の開発では、当初から「ラップタイムを測るだけでなく、走行内容を比較できるようにしたい」と考えていました。
その中で重要になった機能の一つが、セクタータイム計測です。
ラップタイムは、1周の速さを判断するための分かりやすい指標です。
しかし、例えば前回が40.50秒、今回が40.30秒だったとしても、
「どこで0.20秒速くなったのか」
まではラップタイムだけでは分かりません。
逆に、ベストラップを更新できなかった場合でも、
- どの区間は速かったのか
- どこでタイムを失ったのか
- 前の周と走り方がどう違ったのか
を確認できれば、次の走行につながる情報になります。
そこでKLAPでは、コースを複数の区間に分けて計測するセクタータイム機能の開発を進めました。
この記事では、セクター機能をなぜ必要だと考えたのか、どのような仕組みを考えたのか、そして開発を進める中でどのように実装へつなげていったのかを、開発記録としてまとめます。
なぜセクタータイムが必要だったのか
ラップタイマーを使っていると、最初はラップタイムだけでも十分に感じます。
例えば、
40.50秒
というタイムが出れば、その日の自己ベストなのか、前回より速いのかを簡単に確認できます。
しかし、タイムアップを目指して走り込んでいくと、次第にラップタイムだけでは情報が足りなくなってきます。
例えば、
Lap 1 40.50秒
Lap 2 40.40秒
Lap 3 40.45秒
という結果になった場合、Lap 2が最も速かったことは分かります。
しかし、
なぜLap 2が速かったのか?
という部分は分かりません。
そこで1周をいくつかの区間に分けてみます。
| Lap 1 | Lap 2 | |
|---|---|---|
| S1 | 13.30秒 | 13.20秒 |
| S2 | 13.60秒 | 13.40秒 |
| S3 | 13.60秒 | 13.80秒 |
| 合計 | 40.50秒 | 40.40秒 |
このようにすると、Lap 2ではS1とS2が速くなった一方、S3では遅くなったことが分かります。
つまり、
「ラップタイムが速くなった」
という結果だけではなく、
「どの区間でタイムを稼いだのか」
まで確認できます。
これがセクタータイム機能を作ろうと考えた理由です。
セクターラインを自由に設定できるようにする
セクター計測を実装する上で、最初に考えたのが「どこをセクターとして扱うか」という問題でした。
サーキットによって、重要なポイントは異なります。
例えばミニバイクコースなら、
- ヘアピンの進入
- S字区間
- 最終コーナー
- ストレートへの立ち上がり
などを比較したい場合があります。
一方、高速コースでは、
- ブレーキングポイント
- シケイン進入
- 高速コーナー出口
などが重要になる場合があります。
そのため、あらかじめ決められた区間だけではなく、ユーザー自身が必要な場所にセクターラインを設定できる仕組みを考えました。
これによって、同じKLAPでも走行するサーキットや目的に応じてセクターを変更できます。
GPSを利用してセクター通過を判定する
KLAPではGPSを利用してラップラインの通過を判定しています。
セクタータイムについても基本的な考え方は同じで、GPS位置情報を利用して設定したセクターラインの通過を判定します。
ただし、ここで問題になるのがGPS特有の位置誤差です。
単純に、
「GPS座標がセクターラインの近くに来たら通過」
としてしまうと、誤判定が発生する可能性があります。
そこでKLAPのラップ判定で培ってきた考え方を利用しながら、
- GPS位置
- 移動方向
- ラインとの位置関係
- 通過後の状態
などを組み合わせて判定する必要がありました。
これは単純なタイマー機能とは異なり、実際の走行環境を考慮する必要がある部分です。
ラップ計測とセクター計測をどう組み合わせるか
セクター機能を作る上では、ラップ計測との整合性も重要でした。
例えばスタートラインを通過したときにラップタイムを記録し、同時にセクター1、セクター2、セクター3の情報も正しく管理する必要があります。
理想的には、
スタート
↓
S1通過
↓
S2通過
↓
S3通過
↓
ゴール
という一連のデータとして扱います。
これによって、1周のラップタイムだけでなく、各区間のタイムも同じ走行データとして保存できます。
この構造にしておけば、後からKLAP Analyzerでラップとセクターを比較することも可能になります。
10Hz GPSとの組み合わせ
KLAPではGPSの更新レートについても開発当初から検証してきました。
特に10Hz GPSでは、1秒間に10回程度の位置情報を取得できます。
例えば時速100kmで走行している場合、単純計算では、
1Hz:約27.8m
10Hz:約2.8m
の間隔で位置情報を取得することになります。
もちろん、10HzにしたからといってGPSそのものの測位誤差が10分の1になるわけではありません。
しかし、位置情報をより細かい時間間隔で取得できるため、
- ラップライン通過
- セクターライン通過
- 走行ライン
- 速度変化
などを記録する上ではメリットがあります。
セクタータイムのように、コース上の特定位置を通過した時刻を利用する機能では、GPSデータの取得間隔も重要な要素になります。
開発中に分かったこと
セクタータイム機能は、単純に「ラインを追加してタイムを測る」だけではありませんでした。
実際に考えていくと、
- GPS誤差
- ラップ判定との整合性
- セクターの順番
- 二重計測
- 走行方向
- データ保存
- 解析ソフトとの連携
など、複数の問題を考える必要がありました。
特にKLAPでは、以前からGPSによる誤判定を減らすための処理を開発してきました。
そのためセクター機能についても、単純な位置判定だけではなく、実走行を想定した判定処理が必要でした。
セクター計測はKLAP Analyzerにもつながった
セクタータイムをラップタイマー画面で表示するだけでは、活用できる情報に限界があります。
そこで、セクター情報を走行ログとして保存し、後から解析できるようにすることも考えました。
これによって、
- セクターごとのベストタイム
- ラップごとのセクター比較
- 走行ラインとの比較
- 速度データとの比較
などへ発展させることができます。
例えば、
「S1は自己ベストだったが、S2で大きくタイムを失っている」
という結果が分かれば、その区間の走行ラインや速度を確認することができます。
これが、KLAP Analyzerの走行解析機能にもつながっていきました。
「ラップタイマー」から「走行解析」へ
KLAPの開発を始めた当初は、
GPSでラップタイムを測る
ことが大きな目的でした。
しかし、実際にサーキットを走ってデータを確認していくと、
「このタイムになった理由を知りたい」
という新しい目的が生まれました。
そのため、
ラップタイム
↓
セクタータイム
↓
走行ライン
↓
速度データ
というように、少しずつ確認したい情報が増えていきました。
セクター計測は、この流れの中で非常に重要な機能になりました。
その後、セクター計測機能を実装
開発当初は「実装予定」だったセクタータイム機能ですが、その後の開発によって実際にKLAP Analyzerへ実装しました。
現在は、GPSログを利用してセクターを設定し、区間ごとのタイムを確認・比較するための機能として利用しています。
ここで重要だったのは、単に機能を追加したことではありません。
実際にサーキットを走行し、
計測する
↓
データを見る
↓
問題を見つける
↓
プログラムを修正する
↓
もう一度走る
という工程を繰り返したことです。
この実走テストによって、机上では分からなかった問題を確認しながら機能を調整していきました。
セクタータイムを使うと何が分かるのか
セクタータイムを利用すると、ラップタイムだけでは見えなかった差を確認できます。
例えば、
ケース1:全体では遅いが、一部の区間は速い
1周のタイムは自己ベストではなくても、
S1だけ自己ベスト
ということがあります。
この場合、そのS1で行ったライン取りやブレーキングを再現できれば、次の走行でさらにタイムを縮められる可能性があります。
ケース2:ベストラップの理由が分かる
自己ベストが出た周回について、
S1ベスト
+
S2ベスト
+
S3ベスト
が組み合わさっていることが分かれば、そのラップが速かった理由を区間ごとに確認できます。
ケース3:苦手な区間を見つける
逆に、毎回同じセクターでタイムを失っているのであれば、その区間が改善ポイントになります。
ラップタイムだけを見ているよりも、具体的な練習ポイントを見つけやすくなります。
セクタータイムだけで「速さの理由」がすべて分かるわけではない
ここはKLAP Analyzerを使う上でも重要だと考えています。
セクタータイムは非常に便利ですが、
セクタータイムだけで走りのすべてが分かるわけではありません。
同じセクタータイムでも、
- 進入速度
- ブレーキング
- クリップ位置
- 立ち上がり
- 走行ライン
が違う可能性があります。
だからこそKLAPでは、セクタータイムだけではなく、GPS走行ラインや速度データなども組み合わせて確認できる方向へ開発を進めています。
セクタータイムは、走行解析の「答え」ではなく、
「どこを詳しく見るべきかを見つけるための指標」
として利用することが重要だと考えています。
まとめ|セクター計測はKLAPの開発を次の段階へ進めた
セクタータイム機能を開発したことで、KLAPは単純に1周のタイムを測るだけのGPSラップタイマーから、走行内容を比較するためのツールへ少しずつ発展していきました。
開発当初は、
「ラップタイムだけでは、なぜ速かったのか分からない」
という疑問から始まったセクター計測でした。
そこから、
GPSライン
セクタータイム
速度データ
ラップ比較
へと解析する情報が増えていきました。
現在もKLAPとKLAP Analyzerは開発を続けています。
実際のサーキット走行で得られたデータを確認しながら、
「次の走行で何を改善すれば速くなるのか」
を考えるためのツールとして、さらに機能を発展させていきたいと考えています。
Kfactoryでは、KLAPの開発過程だけでなく、実走テストで分かったこと、GPSの特性、走行データの解析方法なども、実際の検証結果をもとに紹介していきます。

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